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2006年3月20日 (月)

私が『ウェブ進化論』の梅田氏を嫌いな理由

『ウェブ進化論』の著者・梅田氏について、内容自体には得るものはあったのですが、読後に残った違和感(はっきり言えば嫌悪感)はなんなのだろうかと少し探ってみました。

1.相変わらず自分の主張が感じられない

これは数年前に高名なビジネス誌に「シリコンバレー在住者」としてのエッセーを毎週出していた時と同じ事です。自分が置かれた状況への批判精神が無く、「残してきたもの」への未練が行間から感じられ、結果として個人としての主張が感じられません。その空間に浮遊しているだけの存在にも思えてきます。単なる報告者であることに、(私がジャーナリストや学者だと勝手に思い込んで)「期待に応えてくれないこと」(*)があるのかもしれません。そういえば、同じ思いは、某大手調査会社の「シリコンバレー派遣」の日本人が当時有償で発行していた「シリコンバレー報告」(とかいった有償小冊子)にもありました。

2.ロジックが甘い

文章全体の構成に手抜きがあります。同じことを何度も言い訳がましく説明しているのは、この方の文章のスタイルなのでしょうか?また、著作というメディアにも関わらず、ほとんど図表がなく、出てくるものもそのタイトルや本文と合っていない点は象徴的です。(例:最後に出てくる図は「進化」を示すものではなく、現状の四象限による類型化でしょう。また、IBMやアップルなど企業の類型化がこの図でできません。)これらは過去のブログを焼きなおしているからかもしれません。また、ライブドアをソフトバンクや楽天などと同列に並べている点もロジックが合っていない上、見識にも欠けています。

3.米国のベスト&ブライテストへの疑いが無い

本文中に何度も出てきますが、(おそらくは自分よりも)「優秀な方々」がすることだから間違いはないだろう、と言う事を無条件に前提としています。むしろ、「あちら側」の問題点への別の視点からの指摘事項に対してはやや感情的といえるような非難をしています。すくなくても、米国のやる事に何の疑いを挟まないのはこのご時世ではオメデタイことだと思います。ベトナム戦争を振り返るまでもなく、この国の「ベスト&ブライテスト」はろくな事をしてこなかったという歴史観が少しでもあれば、もう少し醒めた目で現実を「報告」できるのではないでしょうか。これが徹底して欠けているため、多くの業界通の方が指摘される通り、今回の著作は「広告」として見下されているのではないかと思います。

*中島義道のいう「ひとを嫌う修行」のつもりで書いてみました。きっと私には「相手に対する嫉妬」や「軽蔑」もあるのでしょうね。

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コメント

梅田某というのを初めて知りました。東大の工学部出身というのはいいとして・・・グレンフクシマのアーサーDリトル出身者ですか・・・・数年前に会社が会員となっている物流研究会の幹事がアーサーDリトルでしたが、あそこの社員はキレがあっていいなぁ、パネルディスカッションでも過去一番キレがあった・・・と、好印象なんですが。いずれにしてもインチキっぽそうですね。中島義道風にバッサリ切ってください。

投稿: Amicizia | 2006年3月21日 (火) 20時05分

コメントありがとうございます。
調子に乗って、最初に書かなかった事で「嫌いな理由」の4番目です。
NEC、NTTドコモ、オムロンの「社外委員」をこの方は2001年頃にやっていたそうです。その後、この3社がどういう業績になったかは言うまでもありません。この3社の仕事を(生活のためでしょうか)受ける事自体が、最近言っている事と矛盾していますし、「社外委員」としても仕事をしていないか、大した影響力がなかったか、でしょう。
そして、自分の履歴にこの3社と仕事をした事を未だに掲載する事自体、最近批判している「エスタブリッシュメント」の御威光に依存してますね。
...「ひとを<嫌う>ということ」はメンタルへルスにはいいですね。(今度は「嫌悪療法」かな~)

投稿: mmm | 2006年3月21日 (火) 21時54分

とても興味深いですね。確かに米国万歳には辟易しました。
「こちら側」から出版されたこの本が、既存メディアに持ち上げられてエスタブリッシュメント化されてしまったことが何よりも皮肉な気がします。

投稿: blk | 2006年3月24日 (金) 00時52分

blkさん:
コメントありがとうございます。ブログ拝見しました。視点がとても柔軟で参考になりました。これからも愛読させて頂きます。
ところで、日経BPや朝日新聞に出たことを梅田氏はご自身のサイトで紹介していますね。インタビューの中身を読むと、ますます不愉快になってきます。私にとって、梅田氏はHeelを見事に演じてくれているので「愉快」なのですが、記者の突っ込みが甘い!これも記者に私が「期待に応えてくれないこと」があるのかもしれません。
日経や朝日にお勤めでしたらご勘弁を。(ちなみに私はお金を払っている長年の読者です。)

投稿: mmm | 2006年3月24日 (金) 05時33分

「人を嫌う修行」ですが中島義道の何という著書のどこらへんに書かれている話でしょうか?興味がありますので教えてください。また、「Heelを演じる」の意味を教えてください。後学のためにです。「人を嫌う修行」はなかなか興味があります、私も実践していきたいと思います。

投稿: Glanz | 2006年3月25日 (土) 11時16分

Glanzさん:
コメントありがとうございます。
すみません。「人を嫌う修行」という言葉は、『ひとを<嫌う>ということ』(角川文庫)の195ページにある、自己嫌悪を「溶解」させるためには「他人を正確に嫌い、自分が他人に嫌われることを正確に受け止める修行をするしかないのです」という部分から取りました。この本では、「嫌い」の要因を8項に分け、自己嫌悪、嫉妬、軽蔑、復讐の本質を見極める「嫌いのバイブル」との振れ込みです。実践する上ではこれが参考になると思います。
Heelとはプロレスでよく使われるスラングで、「悪党」「卑怯者」の意味です。今回は、既に本人がその役割を自覚してわざと嫌われる言動をしている、の意味で用いました。(実は私自身、この梅田氏をただの愚か者とは思っていません。非常に計算高い方だと思って「嫌って」います。)

投稿: mmm | 2006年3月25日 (土) 14時40分

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